4. 性能評価
【実車実験結果】
図-10は実車走行時の前席フロア上下Gを測定した結果である。
アクティブダンパーサスペンション車は、従来型サスペンション車と比較し、図-10の40km/h時データはほぼ前周波数域で上下Gレベルが低い。つまり、不快な振動の少ない滑らかな乗り味がデータからも示されている。80km/h時のデータからは1Hz付近の上下Gレベルが低いことがわかる。これはスカイフック効果によるもので、バネ上共付近の周波数の振動がよく抑えられた乗り味が実現できていることを示している。以上、実車データからもアクティブダンパーサスペンションの狙いである低・中速の【しっとりした滑らかな乗り味】と中・高速の【しっかりした走り】が実現できたことが説明できる。
5. まとめ
これまで説明してきた『アクティブダンパーサスペンション』をまとめると次のようになる。
(1) ダンパーの減衰力コントロールでスカイフック制御を実現した。
(2) 減衰力特性に工夫を凝らすことでシンプルなシステム構成とした。
(3) 上下Gレベルの低い滑らかな乗り心地と、抑えの効いたしっかりした走りを両立できた。
電子制御サスペンションの開発は、従来国内メーカーが先行してきていたが、最近、欧州メーカーをはじめとする海外メーカーも高級グレードから採用を拡大してきている。技術開発競争も厳しさを増すことが予想されるが、日産は世界に先駆けて電子制御サスペンションの頂点である『油圧アクティブサスペンション』の90年から量産を続けると共に、今回『アクティブダンパーサスペンション』を開発実用化した。今後も、乗る人の心地良さを重視した電子制御サスペンションを開発していく。
最後に本システムの開発に当たり、多大な協力を頂いた関連メーカーおよび社内関係各位の方々に深く感謝いたします。
6. 参考文献
1) Junichi Emura 他:「Development of the Semi-Active Suspension Sistem Based on the Sky-Hook Damper Theory」、SAE940863
2) 三浦 登 他:「自動車設計と解析シミュレーション」、培風館
3) 大村一世 他:「シャシー制御用Gセンサーの開発・商品化」、日産技報第27号
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