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アクティブ・ダンパー・サスペンションの開発

3. システム構成

3-1 スカイフックダンパー理論
理想的なスカイフックダンパーの構成は図-1に示す構成となっている。絶対空間の一点に固定されたダンパーが車体を支持している。この構成の利点は次の2点である。
(1) 車体が動いた時のみ減衰力が働き、かつ、その力の向きは車体の動きを止める方向にだけ発生すること。<最適制振力>
(2) 路面変位に対して減衰力が働かず、ダンパーを介して車体に力を伝えない。<最小加振力>

図-1

図-2には車体の動き(バネ上絶対速度X1)と、車体-タイヤ間の相対速度(X1-X0)の組み合わせと、それぞれの場合の必要減衰力を示す。第一象限はバネ上速度正(車体が上方に動いている)かつ、バネ上、バネ下の相対速度が正(ダンパ:伸び行程)の状態を示す。この状態に於いては、車体の動きを止めるために車体を引き下げる力が必要である。第一象限においては、大きな伸び側減衰力を発生し、しっかりバネ上を止める。第2〜4象限についても同様に考えると図中に示す減衰力が所望な特性となる。
図-3に単突起を乗り越す場合の減衰力制御の内容を時系列で示す。

図-2 図-3


3-2 入出力ブロック図
システムブロック図および車両搭載図を図-4、図-5に示す。車体前部に2ヶ所、後部に1ヶ所、計3個の上下Gセンサを備えるとともに、ステアリング舵角センサ、車速センサ、ブレーキの各信号を入力としている。16bitマイコンのコントローラで、4輪それぞれのダンパーの最適な減衰力を演算し、その結果に従いステップモータを駆動し、ダンパーを切り換えている。

図-4 図-5


3-3 ダンパー
従来の減衰力切り換えバルブと大きく異なる新開発のバルブ構造を採用した。減衰力可変特性はH-S(伸びハード:H、圧ソフト:S)、S-S、S-Hの3つの領域を持ち次のように切り換えている。
バネ上速度が正(車体が上方に動いている)の時はH-S領域において減衰係数をコントロールすることにより、ダンパー工程が「圧→伸び」に切り替わるときは遅れなく自動的に〔圧:ソフト〕から〔伸び:ハード〕の減衰特性となる。逆に、バネ上速度が負(車体が下方に動いている)の時はS-H領域において減衰係数をコントロールすることにより、ダンパー工程が「伸び→圧」に切り替わるときは同様に〔伸び:ソフト〕から〔圧:ハード〕の減衰特性となる。
また、バネ上速度信号が微小なときはS-S領域とすることで路面から車体への振動の伝達を低減することができる。

図-6


3-4 ステッピングモータ
ダンパーポジション切り替え用のアクチュエータにはハイブリッド型のステップモータを用いている。
本モータは各輪のダンパーピストンロッド上部に、ブラケットを介して固定されておりフロントはエンジンルーム内に、リアはトランクルーム内に設置されている。特筆すべき点は以下の点である。
(1) ハイブリッド型のステップモータの採用により高速かつ高制度な切り替えが可能となった。
(2) エンジンルーム内での使用を前提に開発し、耐環境性の面で高い信頼性を確保した。
(3) ブラケットに対する固定方法をワンタッチタイプとすることで、取付作業性を大幅に向上させた。

図-7 図-8


3-5 上下Gセンサ
車体の姿勢変化を検出するためにボディの3ヶ所に設置している上下Gセンサは、今回アクティブダンパーサスペンション用に、小型、軽量、高精度かつ安価な半導体ピエゾ抵抗タイプのものを新たに開発した。
(1) 構造
センサチップ部はシリコンにマイクロマシニング加工を施した片持ち梁構造をとっており梁部に ピエゾ抵抗を形成している。加速度の作用により梁部に歪みが発生し、その結果ピエゾ抵抗効果による抵抗変化が生じる。この抵抗変化を集積回路で信号処理を行い加速度として検出している。
(2) 特長
従来、半導体の片持ち梁構造の課題とされていた耐落下衝撃性についても、センサ検出部をゴムでフローティングさせる特殊な構造を採用することで優れた耐性を得ている。

図-9


項目性能
(1) 基準出力オフセット
   温度ドリフト
   ヒステリシス
 ±4%以下
(2) 非直線性 ±6%以下
(3) 他軸感度 ±3%以下
(5) 感度の周波数依存性 ±0.5dB以下
(6) 入出力の位相差 -2.5°以下
 サイズ(外形寸法)38×38×21.5 (mm)
表-1 性能表


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