グリル&バンパー開口部を拡大し、冷却風量を最大化。
2017年モデルは、エンジン出力の向上にともなって、さらなる冷却性能の向上が求められた。もちろん、優れた空気抵抗とダウンフォースを実現しながらである。そのために、新造形のフロントグリル&バンパーを採用し、従来の優れた空気抵抗とダウンフォースを維持しながら開口部を最大化。グリル上部裏面にまで及ぶ開口部が冷却風量を極限まで増加させている。さらに新採用のVモーショングリルには整流効果を持たせ、ラジエータへのさらなる空気の誘引を図っている。
空力
GT-Rの空力は、空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能という3つの要素を高次元でバランスさせることを目指している。とはいえ、これらを同時に向上させることは、並大抵のことではない。空気抵抗を抑えようとすれば、ダウンフォースが損なわれ、冷却性能を高めようとすれば、空気抵抗が犠牲になりやすいという、トレードオフの関係があるからだ。
プレミアム・ミッドシップパッケージの空力。
空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能、そのどれかではなく、すべてをバランスさせるのがプレミアム・ミッドシップパッケージの空力である。
例えばGT-Rの場合、エンジンルームに流入した冷却風は、センタートンネルを通ってリヤのトランスミッションへとスムースに流れる。
また、フロントバンパーサイドの形状がホイールハウス側面に負圧の空気流を作り出し、エンジンルームの冷却風をホイールハウスから吸い出す。
これによりエンジンルーム内は負圧となり、
空気抵抗の増大やダウンフォースの低下をともなうことなく冷却風が確保できる。
アンダーカバー下を流れる空気は加速され、ディフューザーによってダウンフォースを発生させる。ダウンフォースの性能を高めるためには、フロアをフラットにするのが理想だが、通常はエンジン下のフロアを塞いでしまうと、冷却風の排出ができなくなってしまう。GT-Rはプレミアム・ミッドシップパッケージを採用することにより、エンジンルームを抜けた空気の流れを、アンダーカバーの上のセンタートンネルへ通し、後部にあるトランスミッションを冷却する。これにより、優れたダウンフォースを発生させるフラットなフロアを実現した。2017年モデルでは、冷却性能をさらに高めながら、ダウンフォースと空気抵抗を高次元でバランスさせるため、SUPER GTマシンの空力テクノロジーのフィードバックに加え、シミュレーションや風洞・走行実験を徹底的に行った。
冷却性能を高めながら、優れたダウンフォースを実現。
フロントスポイラー下部には、フロア下の圧力低下を促し、かつ姿勢変化による影響を受けにくい形状を与え、ダウンフォースを安定化。またサイドシル前部の張り出しによってボディサイドの空気流を整流。負圧となっているフロア下への空気の引き込まれや、横風の流入も防ぐことができ、コーナリング中でも安定したダウンフォースが得られる。加えて、エンジンフードの剛性を強化することにより、高速時の変形にともなうダウンフォースの低下も抑制。ダウンフォースを発生させるリヤディフューザーには、チタン合金製マフラーを冷却するエアダクトを設け、冷却性能も向上させている。
細部の形状の吟味により、従来の優れた空気抵抗も維持。
今回は優れた空気抵抗を維持するため、細部にわたって形状の吟味を行った。例えば、Cピラー上部のわずかな渦流の発生を抑制し、後方への整流機能を向上。リヤバンパーサイドは、ボディサイドの空気流をリヤに回り込ませず剥離させる形状とし、渦流による空気抵抗を低減。これにより排気の流れを妨げることなく、排気熱をスムースに後ろへ逃がす効果も上げている。
プレミアム・ミッドシップパッケージ
4つのタイヤに最大限のグリップ力を生み出すためにまずは、トランスアクスル方式の採用を決定。
GT-Rの開発は、まずリヤタイヤに必要なグリップ力を決めることから始まった。そのために、リヤタイヤに大きな荷重が加わるようトランスミッションを後方に配置する、つまりトランスアクスル方式を選択した。トランスミッションは徹底的に扁平化し、重心位置を後車軸よりも低く設定。この重量とクルマの慣性力が、走りの要ともいうべきリヤタイヤのグリップ力を生み出す。
前後の最適重量バランスと重心位置を決定。
次は、限界域までニュートラルステアを保ち、ブレーキング時にも車両姿勢をフラットに保つために必要なフロントタイヤのグリップ力と荷重を割り出し、そのための前後の最適重量バランスと重心位置を決めた。
エンジンの仕様と搭載位置を決定。
最後に、重心位置を前車軸より後方に置くフロントミッドシップのために、前後長の短いV6エンジン+ツインターボという形式を選択。このエンジンの重量がフロントタイヤの強力なグリップ力の源となる。つまり目標の性能を実現するために、4輪にいかに荷重をかけるか、どれだけのグリップ力が必要かということをすべてに最優先した。
世界初(日産特許)のパワートレイン配置「独立型トランスアクスル4WD」。
さらに、エンジンとトランスミッションが生じる振動を互いに伝えないよう、カーボンコンポジット製のプロペラシャフトで動力のみを結ぶ独立型の設計を採用。
パワートレイン
「洗練された乗り味」も「速さ」も追求した、2017年モデルGT-R専用VR38DETTエンジン。
街乗りも愉しい、2017年モデルGR6型デュアルクラッチトランスミッション。
※写真はイメージです
高効率を追求することで、高出力と燃費性能を同時に向上する。
このGT-Rフィロソフィーに従い、エンジンにさらなる進化のメスを入れた。
2017年モデルでは、ブーストアップとともに、GT-R NISMOからのフィードバックである気筒別点火時期制御を導入。
ブーストアップは、出力・トルクを向上させることができる一方で、ノッキングを発生させるため、点火時期を遅らせることにもなる。
これは排気温度の上昇につながり、温度上昇を抑えるために燃料を多く噴射することとなり、
結果として高負荷領域での燃費性能が悪化してしまう。
そこで気筒別に点火時期を制御し、最適な点火時期とすることでノッキングの発生を抑えつつ、
気筒ごとに異なっていた燃焼圧力をすべての気筒で
最大化。燃費を損なうことなく、出力・トルクの向上を実現した。
最高出力は419kW(570PS)、最大トルクは637N・m(65.0kgf・m)、
燃費はJC08モードで8.8km/L(GT-R Premium editionを除く)へと向上。
その結果、高速域での気持ちのよい伸びとともに、日常多用する追い越しシーンなどの中間加速もアップし、
アクセルの“ツキ”やパワー感も向上。
GT-Rが目指す「洗練された乗り味」と「速さ」にさらなる磨きをかけた。
マルチパフォーマンスというコンセプトのもとに生まれたGT-Rのトランスミッションは、Mモード(パドルシフトによるマニュアルシフト)とAモード(自動変速)の両方が、簡単な切り換え操作により味わうことができる。さらに、セットアップスイッチにより「R」「NORMAL」「SAVE」の3つのモードを選択できる。
「R」モードを選べば、世界最速レベルの変速スピードが可能となり、マニュアルシフトならではの楽しみを高める。
「SAVE」モードを選べば、マイルドな変速となり、燃費性能や雪道での扱いやすさの向上も図れる。
2017年モデルでは、緻密なトランスミッション制御により、街中での快適なドライビングフィールを追求。
例えば、アクセルの踏み込みが浅い日常的な発進*で1速から2速へシフトアップする際、変速のタイミングをわずかに前倒し。
1速、2速ともに半クラッチのうちに2速へ変速することにより、変速の滑らかさを向上。日常的に多用するシーンでの快適性が向上した。また、
スポーツ走行時の変速スピードを犠牲にすることなく、街乗りでの静粛性を高め、加速中にアクセルを戻して加速をやめるような
シーンについてもスムースさを追求した。高速走行だけでなく、日常の街乗りでもGT-Rの走りを愉しんでいただきたい。
*アクセル開度20%を超える発進時は、ダイレクト感のある加速をお楽しみいただけます。
エンジン
*1 GT-R Premium editionを除く。
トランスミッション
*2 アクセル開度20%を超える発進時は、ダイレクト感のある加速をお楽しみいただけます。
マルチパフォーマンス(雪上走破性)
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雪道で空力が効くGT-R。
さらに速度が上がれば、ダウンフォースが効果的に働いてタイヤのグリップ力を助けてくれる。「雪道で空力が効く!」そんな体験をさせてくれるのは、GT-Rならではのものだろう。
雪の坂道でもパワフルに発進。
雪の坂道におけるGT-Rの発進も、特筆すべきものである。低重心のGT-Rは、坂道でもフロントに充分な荷重が加わるため、前輪のグリップ力を効果的に利用して発進することが可能なのだ。さらに、ヒルスタートアシストが直結4WD状態*にするとともに、トランスミッションの「SAVE」モードがエンジン出力のゆるやかな制御を行うため、後ずさりすることなく滑らかな発進をすることができる。また、VDC-Rのセットアップスイッチを「R」モードにすれば、スポーティなドライビングも楽しめる。
*約20km/h以下。
トランスミッション「SAVE」モード / VDC-R「R」モード
トランスミッションのセットアップスイッチを「SAVE」モードにすると、エンジンは過剰な出力が抑えられるうえ、レスポンスがゆるやかになる。シフトチェンジもマイルドになるため、雪道のコントロールが楽になる。またVDC-Rのセットアップスイッチを「R」モードにすると、4WDの前後トルク配分を積極的に活かした協調制御により、高次元のコーナリングが可能に。さらに発進加速性も向上することができる。
ヒルスタートアシスト
VDC-Rで使用している加速度センサーにより、車両が坂道にいることを検出すると、ブレーキペダルから足を離しても最大2秒間ブレーキ液圧を保持。ブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替えによって発生する後退を防止し、坂道の多い市街地での発進や滑りやすい雪道での登坂発進なども容易に行うことができる。
ボディ・足回り
理想的なタイヤのグリップ力を得るために、ボディとサスペンションはどうあるべきか。その解答として、2017年モデルは、世界トップクラスを誇るボディ剛性をさらに向上させることにより、サスペンションのポテンシャルを最大限に引き出し、セッティングを最適化。タイヤの接地性を高め、スタビリティを大幅に向上している。
路面追従性の高さによる、さまざまなメリット。
まずは高いグリップ力が得られることによるコーナリングスピードの向上である。ロールを抑制し車体の挙動変動量を減少させることにより、心地よい乗り味はそのままに、速さや限界性能の高さに磨きがかかった。さらに、高速走行時の直進性が高まり、少々路面が荒れていても修正操舵を与える必要がほとんどない。つまり、より正確なハンドリングで、意のままに走ることができるわけだ。またタイヤがしっかり接地するということは、大径大容量ブレーキシステムによる優れた制動性能もまた、最大限に発揮できる、だからより安心して速く走れるということでもある。
ボディ
サスペンション・ブレーキ・タイヤ
コックピット
一新されたコックピットは、プレミアムと呼ぶにふさわしい質感の高さとともに、直感的な操作性を追求。スイッチ数の大幅な絞り込みや、パドルシフトのクリック感の最適化など、細部に至るまでヒューマン・マシン・インターフェースの思想が貫かれている。
指先ひとつで、思いのままの走りを。
VDC-R、ショックアブソーバー、トランスミッションのそれぞれに、3段階(「R」モード、「NORMAL」モード、各システム固有モード)のモード切り換えができる。さらに、シフトレバーのAモード(自動変速)、Mモード(マニュアル変速)の選択によって、スポーツ走行から雨や雪の高速道路、市街地までさまざまな条件に対応できる。
■セットアップスイッチ モード一覧
Rモード | NORMALモード | 各システム固有モード | |
VDC-R | 4WDの前後トルク配分を積極的に活かした協調制御により、高次元のコーナリングを可能にする。また、発進加速性も向上。 | 日常走行のほとんどのシーンをカバーするオールラウンドな制御を行う。 | OFFモード ぬかるみや深雪でのスタック時、脱出を補助するために使用する緊急対応モード。 |
サスペンション | 減衰力を固定し、本来の高い剛性を活かして大荷重の走行に耐え、車体の動きを最少限に抑え込んだコーナリングを生み出す。 | 減衰力を電子制御により、常に最適にコントロールする、オールラウンドなモード。 | COMFモード 市街地やラフロードに適したモード。路面からの衝撃を和らげ、快適な乗り味を発揮する。 |
トランスミッション | 変速スピードが最速となり、GT-Rならではの小気味よいシフトが可能。 | スムースな変速が行えるオールラウンドなモード。 | SAVEモード 過剰なエンジン出力を抑えることで燃費を向上。エンジンレスポンスがゆるやかになるため、雪道もスムースに走れる。 |
その他のコックピット装備
“会話”するたびに、GT-Rとひとつになっていく。
液晶モニターに車両のコンディションやドライビングの履歴を表示するマルチファンクションメーターを採用。例えばスポーツ走行では、ブースト圧やエンジン油温といったメカニカル情報を表示させ、確実に車両のコンディションを把握できる。ブレーキングやステアリング操作の情報を選べば、それにともなう減速Gや横Gの履歴を20秒間表示。コーナーでいかにコントロールできていたかが分かり、ドライビングテクニックも磨かれる。2017年モデルでは、8インチの大画面化に加え、手元で操作が行えるマルチファンクションスイッチを採用するなど、ヒューマン・マシン・インターフェースも追求している。
さまざまな情報の中から、その時々の走行状況に応じて、ドライバーが必要な情報を選択し、カスタマイズして表示させることができる。写真の表示は、左:ブースト圧、エンジン油温、エンジン油圧の3画面表示。右:エンジン水温、エンジン油温、エンジン油圧、フロントトルク配分率、トランスミッション油温、トランスミッション油圧の6画面表示。
表示可能な情報
水温、油温、油圧など車両のメカニカル情報/アクセル、ブレーキ、ステアリング操作と車両の前後左右G履歴/所要時間表示など。