ダウンフォースと冷却と空気抵抗、すべてを両立させるのがプレミアム・ミッドシップパッケージの空力。
プレミアム・ミッドシップパッケージは自然の力を最大限に使うという思想がある。そのひとつが空気の力、空力である。GT-Rの空力は、大きく分けて2種類の性能を追求している。ひとつは効果的なダウンフォースを発生させてスタビリティを高めること。もうひとつは、エンジンやトランスミッション、ブレーキなどの冷却である。GT-Rはアンダーカバーの上を冷却のため、下はダウンフォースを発生させるため、2つの空気の流れをつくっている。また、フロントグリルから入るエンジンの冷却風は、ホイールハウスから強力に吸い出される。そのため、エンジンルーム内が負圧になり、Cd(空気抵抗係数)を増やすことなく、強力なダウンフォースを発生する。ダウンフォースと冷却と空気抵抗、そのどれかではなく、すべてを両立させるのがプレミアム・ミッドシップパッケージの空力なのである。 |
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GT-Rが目指したのは、いつでも、どこでも常に超高性能を楽しめる走りである。サーキットでも、高速道路でも。雨や雪の道でも、混んだ街中でも。路面を問わず、ドライバーも選ばない。そんなマルチパフォーマンスを生み出すには異次元のタイヤグリップ力が必要になる。そのためにGT-Rのプレミアム・ミッドシップパッケージは、重力という自然の力を最大限に使い切るという発想から設計された。4つのタイヤに最大限のグリップ力を生み出すために、重力というエネルギー、言い換えればクルマの重量をタイヤのグリップ力に活かし切る設計思想である。それは過去に例のない発想であり、その開発手法もまったく新しいものとなった。 |
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GT-Rの開発は、まずリヤタイヤに必要なグリップ力を決めることから始まった。そのために、リヤタイヤに大きな荷重が加わるようトランスミッションを後方に配置する、つまりトランスアクスル方式を選択した。次は、限界域までニュートラルステアを保ち、ブレーキング時にも車両姿勢をフラットに保つために必要なフロントタイヤのグリップ力と荷重を割り出し、そのための前後の最適重量バランスと重心位置を決めた。そして、最後にエンジンの仕様と搭載位置を決める。つまり目標の性能を実現するために、4輪にいかに荷重をかけるか、どれだけのグリップ力が必要かということをすべてに最優先したのである。こうしてフロントミッドシップのトランスアクスル方式4WDというパワートレインが決まると、次はそれぞれの重量をいかにコントロールするかが課題となった。クルマとは、多くの振動体の集合物である。エンジンからトランスミッションまでをプロペラシャフトで結ぶこの方式では、それぞれの振動が干渉し合ってしまう。そのため、GT-Rはそれぞれを切り離した上、インシュレーターを介してマウントする独立型とした。さらに、ボディの振動を、エンジンやトランスミッションの重量を活かして打ち消し合うように設計。つまり、ボディダンパーとして機能するようにエンジンやトランスミッションのマウントを周波数チューニングするのである。このチューニングを最適に行うためには極めて高度な技術が必要とされる。 |
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